ネットワークエンジニアがExcelを使う目的は、IP・VLAN・ポートの設計値を一意に管理し、同じ入力から設定と試験項目を作り、レビュー可能な証跡を残すことです。機器設定を自動生成するだけではなく、設計から試験までの追跡性を保つために使います。
本文には、IP・VLAN・ポート表、設定生成式と生成結果、通信要件表、試験項目書の完成例を掲載します。入力規則、重複検出、差分レビュー、CSV化、Excelへ依存しすぎるリスクも実務の順番で整理します。
初期の頃
ネットワークエンジニアになって
早くルータとかスイッチをガチャガチャ触りたい
とか思ってたら業務の7割がEXCEL使う時間で
なにこれ。ってなった✋NWエンジニアとして
仕事出来る人はOffice上手く使える人
だとは思わなかった…👇業務の7割これ
✅Visio
✅Excel
✅PowerPoint
✅Word— けんと@設計構築チャンネル (@yeiquer12) 2023年6月1日
ネットワーク実務では機器操作よりExcelを使う業務が大きな割合を占めるという経験を共有したポスト。
ネットワークエンジニアがExcelを使うのはなぜ?
設計値を表形式で一意に管理し、同じ行から設定、試験項目、作業対象を展開できるからです。Excelの操作速度より、入力、計算、出力、レビューを分け、誰が見ても同じ結果を再生成できる構造が評価されます。
| 成果物 | 主な列 | 後工程での利用 |
|---|---|---|
| IP・VLAN台帳 | 用途、サブネット、Gateway、予約範囲、VRF | アドレス設計、重複確認、監視 |
| ポート表 | 機器、ポート、対向、VLAN、Speed、LAG | 設定、配線、単体試験 |
| 通信要件表 | 送信元、宛先、プロトコル、ポート、対応 | ACL/FW/NAT、結合試験 |
| パラメータシート | 設計値、既定値、変更値、根拠、レビュー担当者 | 設定生成、設計レビュー |
| 試験項目書 | 前提、操作、期待値、結果、Evidence | 受入判定、障害時比較 |
IP・VLAN・ポート設計書はどう作る?
一つのセルへ複数情報を詰めず、機器・インターフェース・VLAN・IPなど検索と検証に使う値を列へ分けます。色だけに意味を持たせず、Statusや変更区分も値として記録します。
| ID | 機器 | インターフェース | モード | VLAN | 対向・用途 | 確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| P-001 | SW1 | Gi1/0/1 | trunk | 10,20,30 | SW2 Gi1/0/1 | レビュー済 |
| P-002 | SW1 | Gi1/0/10 | access | 20 | 業務PC-01 | レビュー済 |
| P-003 | SW1 | Gi1/0/11 | access | 20 | 業務PC-02 | 要確認 |
| P-004 | SW1 | Gi1/0/20 | access | 30 | Printer-01 | レビュー済 |
VLAN台帳では、VLAN ID、名称、サブネット、Gateway、DHCP範囲、予約範囲、VRF、用途、廃止予定日を分けます。ポート表とVLAN台帳をIDで関連付けると、名称変更やサブネット変更を追いやすくなります。
パラメータシートから設定を生成するには?
入力列をA〜C、生成式をD列、レビュー結果をE列のように分離します。以下はインターフェース番号、Description、Access VLANからCisco IOS系の設定例を作る検証用の式です。
# A2=10、B2=USER-PC、C2=20 の例
="interface GigabitEthernet1/0/"&A2
=" description "&B2
=" switchport access vlan "&C2
# 複数行をセル内改行で連結する例
=TEXTJOIN(CHAR(10),TRUE,D2:F2)
生成結果は次のようになります。これは設定例であり、本番投入用ではありません。モード、Shutdown、既存ポート-channel、Voice VLAN、ポート セキュリティなどの例外を別列で管理し、対象OSの構文と現行設定をレビューしてください。
interface GigabitEthernet1/0/10
description USER-PC
switchport mode access
switchport access vlan 20
TEXTJOINは区切り文字を指定して複数の文字列を結合する関数です。利用できるExcel版とセル文字数上限を確認します。
出典:Microsoft Support: TEXTJOIN function
通信要件・ACL・NATルールはどう表にする?
「サーバーへ接続できること」では設定条件が不足します。送信元、宛先、プロトコル、ポート、方向、変換前後、対応、業務目的、担当者を一行へ分解します。
| ID | 送信元 | 宛先 | プロトコル/ポート | NAT | 対応 | 目的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| R-001 | 10.20.0.0/24 | 192.0.2.20 | TCP/443 | なし | 許可 | 業務Web |
| R-002 | 10.20.0.0/24 | 192.0.2.53 | UDP,TCP/53 | なし | 許可 | DNS |
| R-003 | Internet | 203.0.113.10→10.30.0.10 | TCP/443 | DNAT | 許可 | 公開Web |
この表からACL・FW ポリシーを作るだけでなく、同じIDを試験表へ引き継ぎます。NAT前後のどちらをポリシーが参照するかは製品と処理順で異なるため、設計書に判定点を記載します。
試験項目書とエビデンスはどう管理する?
試験表は操作だけでなく、前提条件、期待結果、実測結果、判定、Evidence名を持たせます。許可試験と拒否試験を分け、送信元を変えた場合は別項目にします。
| 試験ID | 要件ID | 前提・操作 | 期待結果 | 実測・証跡 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| T-001 | R-001 | 10.20.0.10から192.0.2.20:443へ接続 | HTTPS応答、許可ルール hit | curl結果、FWログ | 未実施 |
| T-002 | R-001 | 別VLANから同宛先へ接続 | 拒否、Drop ログ | 接続結果、FWログ | 未実施 |
| T-003 | R-003 | 外部試験元から公開IP:443へ接続 | DNAT後サーバー応答 | NAT セッション、HTTP応答 | 未実施 |
Evidenceファイル名は、試験ID、機器名、日時を含めると照合しやすくなります。スクリーンショットだけでなく、可能ならテキスト出力を保存し、検索・差分比較できる状態にします。
入力規則・重複チェックで設計ミスをどう減らす?
VLAN IDやStatusは入力規則のリスト、IP・機器名・ポート IDは重複検出、必須列は空欄検出を設定します。ただし入力規則は既存の不正値を自動修正しないため、引き継いだBookでは無効データの検査も行います。
# 重複候補を判定する式の例
=COUNTIF($A$2:$A$500,A2)>1
# 必須3列の空欄を判定する式の例
=COUNTBLANK(A2:C2)>0
# 2列の組み合わせ重複を判定する式の例
=COUNTIFS($B$2:$B$500,B2,$C$2:$C$500,C2)>1
重複削除は行を削除する操作です。設計台帳では先に条件付き書式やフィルターで候補を確認し、正当な重複や予約行を消さないようにします。
出典:Microsoft Support: Filter for unique values or remove duplicate values、Microsoft Support: More on data validation
CSV化・WinMerge比較はどの順で行う?
CSVやテキストへ出力する前に、列順、文字コード、改行、Delimiter、引用符、先頭ゼロ、数式セルの計算結果を確認します。出力後は元Book、生成テキスト、現行設定、投入予定設定の四つを区別します。
- 元データの版数とレビュー状態を固定する
- 生成対象行だけをフィルターし、件数を記録する
- CSV/テキストへ出力して文字コードと改行を確認する
- 生成設定を構文チェックし、例外行を確認する
- WinMergeで現行設定との差分を確認する
- 意図した追加・変更・削除だけかをレビュー担当者が承認する
- 投入後のshow・通信試験を試験IDへ保存する
差分ツールでは並び順や自動生成Timestampが大量差分を生むことがあります。比較前に正規化ルールを決め、意図しない設定削除を見落とさないようにします。
Excelだけに依存すると何が起きる?
Excelは柔軟ですが、同時編集、版管理、権限、監査、データ量、機械的な整合性では専用のIPAM・構成管理・Gitが適する場合があります。Excelを唯一の正本にするか、中間成果物にするかを案件で決めます。
| リスク | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 版の分岐 | 最新版が複数存在 | 保存先、版数、担当者、承認状態を固定 |
| 数式の上書き | 一部行だけ生成結果が変化 | 保護、数式列分離、差分確認 |
| 色・結合セル依存 | フィルター・CSV・自動処理が困難 | 値と列で意味を表現 |
| 機密情報 | 構成・認証情報が拡散 | 権限、暗号化、保存期限、Secret分離 |
| 無レビュー自動生成 | 誤りを大量展開 | 件数照合、構文・差分・実機前レビュー |
設計・設定・試験を一つの流れで管理する方法
要件ID、設計ID、設定行、試験ID、Evidence名を関連付けると、要件変更の影響と未試験箇所を追えます。Excelのシートを増やすだけではなく、一意なIDと参照関係を決めることがポイントです。
通信要件 R-001
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+--> 設計値 P-002 / ACL Rule-010
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| +--> 生成config 行35-42
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+--> 試験 T-001(許可)
+--> 試験 T-002(拒否)
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+--> Evidence T-002_FW_20260818.txt
まとめ:Excelは設計から試験までをつなぐ
ネットワーク実務では、IP・VLAN・ポート表を正本として整理し、同じ入力から設定と試験表を作ります。入力規則と重複検出で誤りを減らし、生成後は現行との差分と例外行を人がレビューします。
Excelだけへ依存せず、案件規模に応じてIPAM、Git、構成管理ツールと役割を分けてください。要件IDからEvidenceまで追跡できれば、変更・障害・引き継ぎでも使える成果物になります。
