ネットワークの設計構築では、機器を触る時間だけでなく、Excelで値や試験結果を整理する時間も多くあります。ただ表を埋める仕事に見えると、何を確認する資料なのかが分かりにくいですよね。
VLAN台帳は使う範囲を決める資料、ポート表は接続と設定を合わせる資料、試験表は要件が動くか確かめる資料です。この記事では同じ設計IDを追い、入力からconfig、試験へつなぐ使い方を説明します。

最初に、一行が何を表す表かを決める
ポート表なら一行は一つの機器の一つのIF、通信要件表なら一行は一つの許可・拒否の要件、と決めます。異なる種類の情報を同じ行へ詰めると、並べ替えや検査が難しくなります。
機器名、IF、VLAN、対向を列へ分けます。色だけで変更や確認済みを表すより、変更区分や状態を文字でも持つと、印刷やCSVでも意味が残ります。
| シート | 一行の単位 | 主な列 |
|---|---|---|
| VLAN台帳 | VLANと参照範囲 | ID、VRF、VLAN、用途、サブネット、GW |
| ポート表 | 1つの機器の1つのIF | 設計ID、機器、IF、モード、VLAN、対向 |
| 通信要件 | 1つの通信条件 | 要件ID、送信元、宛先、プロトコル、ポート、許可/拒否 |
| 設定生成 | 1つの設計IDの生成結果 | 入力ID、config、生成版、レビュー結果 |
| 試験表 | 1つの確認操作 | 試験ID、要件ID、前提、操作、期待値、実結果、証跡 |
集計するデータ領域では結合セルを増やしすぎず、見出しの装飾とデータを分けます。見やすさと検査しやすさの両方を考えます。
同じIF名でも、機器が違えば別のポート
SW1のGi1/0/10とSW2のGi1/0/10は別ポートです。重複を調べるなら、IF名だけでなく機器名も合わせたキーを使います。
VLAN番号やIPも、独立した環境では同じ値が存在することがあります。どの環境、機器、VRFの範囲で一意にするかを決めてから検査します。
| 設計ID | 機器 | IF | モード | VLAN | 対向 |
|---|---|---|---|---|---|
| P-ACCESS-10 | SW1 | GigabitEthernet1/0/10 | access | 81 | PC-A |
| P-ACCESS-11 | SW1 | GigabitEthernet1/0/11 | access | 81 | PC-B |
| P-UPLINK-48 | SW1 | GigabitEthernet1/0/48 | trunk | 81,92 | SW2 Gi1/0/48 |
図のP-ACCESS-10は設計IDです。同じIDをポート表、生成config、確認結果へ添えると、どの入力からどの設定を作ったかを追えます。
表の一行と機器の一行が同じ対象を指すことが、レビューの土台になります。行数が合うだけでなく、対象が合うことを確認してください。
設定生成は、同じ形のaccessポートから始める
式はA列からF列の値を使い、interface、description、VLANなどの行をつなぎます。CHAR(10)は改行です。「折り返して全体を表示」で、セル内の複数行を読めます。
D列がaccess以外ならレビューの表示にする例です。trunkへaccess用の設定を作らないため、最初は対象の形を限定します。
=IF(D2<>"access","要レビュー: access以外",
"interface "&C2&CHAR(10)&
" description "&F2&CHAR(10)&
" switchport mode access"&CHAR(10)&
" switchport access vlan "&E2)
この入力から生成するconfigの例
interface GigabitEthernet1/0/10
description PC-A
switchport mode access
switchport access vlan 81
この式は、空欄、対応機種、VLANの存在、現在の設定まで全部検証するものではありません。文字列が出たことと、投入できる設定になったことは別です。
コピーした文字列は、引用符や改行も確認します。変更前のconfigと比べ、対象外の行がないかをレビューします。ACLやPort-channelのように順序や関連がある設定は、単純な行連結だけで済ませないようにします。
入力規則と重複検査は、見つけられる範囲を知る
access/trunkをリストで選ばせると、入力の揺れを減らせます。COUNTIFSで機器とIFが同じ行を数えれば、二重登録の候補を見つけられます。
ただし、ルールを通った値が設計上も正しいとは限りません。存在しないVLAN番号でも範囲内なら入力できる、貼り付けで想定外の値が入る、といった限界があります。
同じ機器・IFの重複を検査する例:H2
=IF(OR(B2="",C2=""),"未入力",
IF(COUNTIFS($B$2:$B$100,B2,$C$2:$C$100,C2)>1,"重複","OK"))
| 検査 | 設定例 | 限界 |
|---|---|---|
| モード | access/trunkのリストから選択 | 貼り付け等で想定外の値が入る場合も確認 |
| access VLAN | 整数の入力規則、環境の採番範囲 | 予約・未作成VLANを自動で判断しない |
| 機器・IFの重複 | 上のCOUNTIFS | 空白、略記、全角文字などの表記差は別に整理 |
| IPの重複 | VRFや環境を含むキーを決めて比較 | 文字列の重複だけではサブネット重複を判定できない |
IP、MAC、型番、IDは文字列として扱う列を決めます。CSVの取り込みでは型と文字コードも確認します。Excelが別の型へ変換すると、元の表記が変わることがあります。
検査の結果には「何を調べたか」を添えます。重複がないことを、配線や通信まで正常だった意味へ広げないでください。
通信要件のIDを、許可・拒否の試験へ引き継ぐ
NW-APP-01でHTTPSを許可するなら、その要件へ対応するT-APP-01で実際の応答を確認します。許可しないSSHの試験も別に作り、どの装置のルールで止まったかを記録します。
期待値は試験前、実結果は実行後に書きます。期待した文章を実結果へコピーすると、観測した内容が分からなくなります。
| 要件ID | 送信元 | 宛先 | 条件 | 期待値 |
|---|---|---|---|---|
| NW-APP-01 | 172.27.81.15 | 172.27.92.25 | TCP443 | HTTPSを許可 |
| NW-SSH-01 | 172.27.81.15 | 172.27.92.25 | TCP22 | 新規SSHを拒否 |
| 試験ID | 要件ID | 操作 | 実結果・証跡 |
|---|---|---|---|
| T-APP-01 | NW-APP-01 | 指定URLへHTTPS要求、TLSと応答を確認 | 実施後に記入 |
| T-SSH-01 | NW-SSH-01 | 待受確認後、端末から新規接続を試す | FW拒否ログと時刻を保存 |
失敗後に直して再試験した場合は、最初の結果と修正後を追えるようにします。試験IDと設定版、出力の保存先をそろえると、変更の経緯を確認できます。
図のように設計から試験までIDがつながれば、「この要件を、この設定で実現し、この試験で確かめた」と説明できます。
レビューでは、入力・式・出力・実機を別々に見る
正本の版と作業対象を確認し、入力値、式、生成結果をそれぞれ見ます。シートに数式エラーがないことだけでなく、参照先とコピー範囲が合うかも必要です。
印刷やCSVへ出す場合は、見切れ、隠れた列、フィルター、文字化けを確認します。画面で見える行だけを、すべての対象と判断しないようにします。
- 正本ファイル、版、作業対象、更新者をそろえる。
- 数式・入力・生成結果を分け、入力漏れやエラーを検査する。
- フィルターで非表示になった行と、印刷・出力範囲を確認する。
- CSV化する場合は、対象シート、文字コード、先頭ゼロ、改行を確認する。
- 元ファイルを残し、出力テキストをWinMergeで変更前と比較する。
- configのレビュー後、実機状態と実通信で試験する。
規模が大きくなればIPAMやGitなどと役割を分ける方法もあります。どの道具でも、何が正本で、どの入力から設定を作ったかを説明できることが大切です。
まず一ポートと一通信を、台帳から試験まで追ってみてください。Excelの作業が、転記から確認のための資料作りへ変わります。
動画・筆者の投稿で補足する
文章と図で流れをつかんだら、関連する動画も参考にしてください。画面の表示や操作は、機種・ソフトウェアの版によって異なる場合があります。
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