スイッチの資料を読むと、「アップリンクは10G」「ここはダウンリンク」といった言葉が出てきます。ポートの種類の話なのか、通信の向きの話なのか、最初は区別しにくいですよね。
LANの構成でいうアップリンクは、上位のスイッチやルーターへつながる接続です。ダウンリンクは、端末や下位スイッチへつながる接続。同じケーブルでも、どちらの装置から見るかで呼び方が変わります。
まず構成図で位置関係をつかみ、そのあとでtrunk設定、帯域、冗長化を見ていきましょう。速いポートだからアップリンク、と決める必要はありません。
アップリンクは「上位へつなぐ役割」の名前
PCがつながるスイッチをアクセススイッチと呼びます。そこから複数のスイッチをまとめる装置へ伸びる接続が、アクセススイッチ側のアップリンクです。たくさんの端末の通信を、先のネットワークへ運ぶ入口になります。
一方、PCや無線APを収容するポートはダウンリンクです。端末だけでなく、下位のスイッチへつながる場合もあります。表では、接続先と役割を合わせて見てください。
| 比較 | アップリンク | ダウンリンク |
|---|---|---|
| 主な接続先 | 上位スイッチ、コアスイッチ、ルーター | PC、サーバー、AP、IP電話、下位スイッチ |
| 役割 | 複数の下位通信を上位へ集約する | 端末や下位ネットワークを収容する |
| よく使う速度 | 10G/25G/40G/100Gなど高速になりやすい | 1G/2.5G/5G/10Gなど接続機器に合わせる |
| VLAN | 複数VLANを運ぶtrunkが多い | 端末向けaccessが多いが、trunkの場合もある |
| 重要度 | 障害時の影響範囲が広い | 通常は接続先単位の影響になりやすい |
製品の仕様書に「アップリンクポート」と書かれているのは、高速ポートやSFPスロットをその用途に用意しているためです。使える速度やモジュールには制約があるので、役割の名前とは別に仕様を確認します。
図がある場合もない場合も、接続先から確かめる
構成図は端末側から上へたどると読みやすくなります。アクセス、ディストリビューション、コアという順番は、端末を収容する場所から、通信をまとめる場所へ進む並びです。小規模なLANでは、これらを一台で兼ねることもあります。
アクセススイッチから上位へ向かう一本のケーブルを、上位スイッチから見ると「下位を収容するダウンリンク」と呼びます。上下は図に固定されたケーブルの性質ではなく、装置から見た関係です。
- ポート管理表とdescription:機器名・ポート番号・対向名を照合する。例:ACC-SW01 Gi1/0/48 → DIST-SW01 Te1/0/1。
- 隣接情報:CDPまたはLLDPが許可されていれば対向装置名とポートを確認する。無効な環境では配線表や対向側の設定で確認する。
- 設定と通信:access/trunk、許可VLAN、Port-channel、MAC学習、トラフィック量を確認し、設計図と一致するか判定する。trunkでも下位スイッチやAP向けのダウンリンクはあります。
show interfaces description
show cdp neighbors detail
show lldp neighbors detail
show interfaces trunk
show etherchannel summary
↓ コア側のダウンリンク
↓ ディストリビューション側のダウンリンク
Gi1/0/48
Te1/0/1
図がなければ、descriptionに書かれた対向名と、CDP/LLDPの隣接情報を照合します。これらは隣の装置名やポートを知らせる仕組みです。無効な環境では表示されないので、配線表や対向側の確認で補います。
作業の会話では「アップリンクを確認した」で止めず、機器名と両端のポートまで書きましょう。たとえばACC-SW01 Gi1/0/48とDIST-SW01 Te1/0/1です。「リンクアップ」はポートが使用可能になった状態を指す言葉で、アップリンクの役割とは別です。
trunkかどうかは、役割とは別に読む
trunkは、複数のVLANを一本のリンクで運ぶ設定です。accessは、通常、一つのVLANへ端末を接続する設定。アップリンクが「どこへつなぐか」を表すのに対し、こちらは「VLANをどう扱うか」を表します。
上位へ複数VLANをまとめて運ぶため、アップリンクがtrunkになる構成はよくあります。ただし、ルーターへIPで接続するL3ポートもあれば、一つのVLANだけを運ぶaccessの接続もあります。
| 用語 | 何を表すか | 判断材料 |
|---|---|---|
| アップリンク | 上位ネットワークへつながる役割 | 構成図、対向機器、設計意図 |
| ダウンリンク | 端末や下位ネットワークへつながる役割 | 構成図、対向機器、設計意図 |
| access | 原則として1つのVLANをタグなしで収容 | switchport設定、VLAN割り当て |
| trunk | 複数VLANをIEEE 802.1Qタグで運ぶ | switchport設定、allowed VLAN |
| ポートチャネル | 複数の物理リンクを1本の論理リンクに束ねる | EtherChannel/LACP設定 |
- L3リンクで上位ルーターへ接続するアップリンク:
no switchportでルーテッドポート - IP電話とPCを同じポートに収容するダウンリンク:data VLANとvoice VLANを併用
- 仮想基盤や無線AP向けダウンリンク:複数VLANを運ぶtrunk
- 1つのVLANだけで上位へ接続する小規模構成:アップリンクでもaccess
ACC-SW01# show interfaces description
Interface Status Protocol Description
Gi1/0/1 up up PC-SALES-01
Gi1/0/24 up up AP-FLOOR-3
Te1/1/1 up up UPLINK_to_DIST-SW01_Te1/0/1
Te1/1/2 up up UPLINK_to_DIST-SW02_Te1/0/1
ACC-SW01# show cdp neighbors
Device ID Local Intrfce Holdtme Capability Port ID
DIST-SW01 Ten 1/1/1 146 R S I Ten 1/0/1
DIST-SW02 Ten 1/1/2 138 R S I Ten 1/0/1
ACC-SW01# show lldp neighbors detail
ACC-SW01# show interfaces trunk
ACC-SW01# show interfaces Te1/1/1 switchport
ACC-SW01# show running-config interface Te1/1/1
ACC-SW01# show interfaces Te1/1/1 status
ACC-SW01# show mac address-table interface Te1/1/1
ACC-SW01# show interfaces Te1/1/1 counters
ACC-SW01# show interfaces Te1/1/1 | include rate|drop|error
無線APや仮想化サーバーへ複数VLANを運ぶダウンリンクは、trunkになることがあります。ポートの設定だけで上下を断定せず、対向機器と用途まで合わせて見ます。
確認コマンドでは、descriptionで接続先、trunk表示で運ぶVLAN、MAC表で先にいる端末を調べます。MACが多数見えるポートも、下位のサーバー基盤につながっている可能性があります。一つの特徴だけで判断しないことが大切です。
帯域は、端末ポートの合計と実際の利用を比べる
48台のPCを1Gbpsで収容し、上位へ10Gbpsでつなぐ例を考えます。端末側の合計は48Gbpsですが、全員が同時に最大速度で送るとは限りません。そのため、上位側が10Gbpsでも業務に足りる場合があります。
端末側の合計を上位側の帯域で割った値を、オーバーサブスクリプション比と呼びます。この例では48÷10で4.8対1です。比率だけで良い・悪いを決めるのではなく、同時に使う量を調べます。
| 確認項目 | 具体例 | 設計への影響 |
|---|---|---|
| 同時利用率 | 業務開始、昼休み後、バックアップ時間 | ピーク時トラフィックを基準にする |
| 通信方向 | サーバー向け、インターネット向け、端末間 | 本当にアップリンクへ集約される量を把握 |
| アプリ特性 | 音声、映像、ファイル、VDI | 帯域だけでなく遅延・損失も考慮 |
| 将来増設 | AP増設、2.5G端末、クラウド移行 | ポート速度と光モジュールの余裕を確保 |
| 障害時 | 2本のうち1本が停止 | 残存リンクだけで耐えられるか確認 |
バックアップや大容量ファイルの転送が重なる時間帯には、上位側へ通信が集中します。平均使用率が低くても、短い時間に集中してパケットが捨てられることがあるので、ピークとdropの増分も確認します。
増速の判断には、現在の利用、今後の端末増加、障害で一本になったときの帯域を使います。「端末が48台あるから48Gbpsが必須」とも、「平均が低いから問題ない」とも言い切れません。
二本にするなら、切替の仕組みまで決める
アップリンクが一本だけだと、そのケーブルや対向ポートの故障で、配下の端末がまとめて通信できなくなります。二重化では、ケーブルを増やすだけでなく、普段はどの経路を使い、故障時にどう切り替えるかを決めます。
STPはループを防ぎながら待機経路を用意する仕組みです。LACPは複数の物理リンクを一つの論理リンクにまとめる仕組み。目的が違うので、表の特徴を見比べてください。
| 方式 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| STPによる二重化 | ループを防ぎ、一方を待機経路にする | ブロックポートと切替時間を把握する |
| EtherChannel/LACP | 複数物理リンクを1論理リンクとして利用 | 両端の速度、VLAN、LACP設定を一致させる |
| スタック/MLAG系 | 異なる筐体へまたがってリンクを束ねる | 製品ごとの構成要件と障害モードを確認 |
| L3冗長化 | ルーテッドリンクと動的ルーティングで迂回 | 収束時間、ECMP、経路制御を設計する |
interface range TenGigabitEthernet1/1/1-2
description UPLINK_to_DIST-SW
switchport mode trunk
switchport trunk allowed vlan 10,20,30
channel-group 10 mode active
interface Port-channel10
description UPLINK_to_DIST-SW
switchport mode trunk
switchport trunk allowed vlan 10,20,30
設定例のchannel-groupは、ポートをPort-channelへ参加させる指定です。両端の速度やVLANなどがそろい、想定したメンバーが参加しているかをshow etherchannel summaryで確認します。一方が外れていても通信は続くため、疎通だけでは異常を見落とします。
二本が同じ電源や筐体に依存していれば、一度に止まる故障が残ります。また、LACPの二本を一本の通信が必ず同時に使うわけではありません。一本の転送速度がそのまま二倍になる、と説明しないようにしましょう。
遅い・つながらないときは、状態を一段ずつ読む
配下の端末がまとめてつながらない場合、アップリンクは確認したい場所の一つです。まずリンクが上がっているかを見ます。downなら、両端のshutdown、ケーブル、光モジュール、速度など、接続そのものを調べます。
upなら次に、STPが転送を許しているか、Port-channelへ参加しているか、必要なVLANが両端で通るかを確認します。特定VLANだけ失敗するなら、ケーブル断よりVLAN設定の違いを先に考えられます。
show interfaces status
show interfaces TenGigabitEthernet1/1/1
show interfaces counters errors
show interfaces trunk
show spanning-tree interface TenGigabitEthernet1/1/1 detail
show etherchannel summary
show cdp neighbors detail
show logging | include UPDOWN|ERR|SPANTREE|EC
時間帯で遅くなる場合は、エラーと混雑を分けます。エラーが増えるなら配線や光レベル、dropが増えるなら帯域や集中の状況を調べます。表示を一度見ただけでなく、同じ時間幅でどれだけ増えたかを残すと比較できます。
FAQの「二本なら速くなるか」も、この確認につながります。正常に束ねられたか、どの通信がどのリンクを使うか、片系故障後も足りるかを分けて見ると、役割と状態を混同しなくなります。
無線や回線の「上り」は、基準点を確認する
携帯回線でいうアップリンクは、スマートフォンから基地局へ送る方向です。無線LANなら端末からAP、衛星通信なら地上から衛星、というように、分野によって基準点が変わります。
LANのポート役割を話しているのか、通信の送信方向を話しているのか。ここを確かめるだけで、同じ言葉による混乱を減らせます。
- 無線LAN:端末からAPへ送る方向がアップリンク、APから端末へ送る方向がダウンリンク
- モバイル通信:スマートフォンから基地局へ送る方向がアップリンク、基地局から端末へ送る方向がダウンリンク
- 衛星通信:地上局から衛星へ送る方向がアップリンク、衛星から地上局へ送る方向がダウンリンク
- インターネット回線:利用者側からインターネットへ送る方向が上り、受け取る方向が下り
スイッチの構成を読むときは、最初に両端の機器とポートを確認してください。そのあとでVLAN設定、帯域、冗長化を読むと、「どこへつながる接続で、何を運ぶのか」を順に説明できます。
