通信できないときは、事象と影響範囲を固定してから、物理、L2、L3、ACL・ファイアウォール、端末・アプリケーションの順に確認します。全案件で開始点が完全に同じとは限りませんが、下位層から観測事実を積み上げると、推測による設定変更を減らせます。
本文には、そのまま記録欄として使える12項目のチェックリスト、切り分けフロー、正常時・異常時のshowコマンド例、復旧・切り戻し・エスカレーションの判断基準を掲載します。
⭕️ネットワークエンジニアが
障害切り分けで理解しておきたいこと
pingが通らない理由10選pingが通らないとき、
つい「ネットワークが悪い」
と考えがち。でも実際には、
原因はいろいろある。pingは単純に見えて、
L1〜L3、FW、端末設定など
多くの要素に依存している。— けんと@設計構築チャンネル (@yeiquer12) 2026年6月6日
戻り経路、ARP、VLAN、ACL/FW、端末FW、IP重複、物理リンクを順に確認すると示したポスト。
ネットワーク障害はどの順番で切り分ける?
最初に「誰から誰へ、何が、いつから、どこまで影響しているか」を確定し、その後に物理、L2、L3、セキュリティ、端末・アプリケーションの順で確認します。直前変更が明確なら変更点を優先して構いませんが、関連する下位層の状態も同時に保存します。
事象・範囲・直前変更を固定
|
v
[物理] Link / Error / 電源 / 配線
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v
[L2] VLAN / Trunk / STP / MAC
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v
[L3] IP / Mask / ARP / Route / 復路
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v
[制御] ACL / FW / NAT / Session
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v
[端末・アプリ] DNS / Port / Service / Host FW
この順番の目的は、OSI参照モデルを暗唱することではなく、正常な区間と異常な区間の境界を一つずつ確定することです。各段階で期待値、実測値、判断を記録します。
そのまま使える通信障害チェックリスト12項目
次の12項目を上から確認し、結果欄へ「正常・異常・未確認」と証跡の保存先を記録します。環境によって不要な項目は、未実施ではなく「対象外」と理由を残してください。
| No. | 確認項目 | 確認方法・コマンド例 | 正常の目安 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 事象と影響範囲 | 送信元・宛先・プロトコル・ポート・開始時刻を記録 | 再現条件と対象範囲が確定 | 正常/異常/未確認 |
| 2 | 直前変更 | 作業記録、設定差分、監視イベント | 変更有無と担当者が確定 | 正常/異常/未確認 |
| 3 | 電源・配線・リンク | show interfaces status |
対象ポートが期待速度でup | 正常/異常/未確認 |
| 4 | エラー・Discard | show interfaces counters errors |
増加傾向なし | 正常/異常/未確認 |
| 5 | Access VLAN・Trunk | show vlan brief、show interfaces trunk |
設計VLANが通過 | 正常/異常/未確認 |
| 6 | STP・LAG | show spanning-tree、ポート-channel状態 |
想定ポートが転送中 | 正常/異常/未確認 |
| 7 | MAC学習 | show mac address-table |
対象MACを正しいVLAN/ポートで学習 | 正常/異常/未確認 |
| 8 | IP・マスク・GW | ipconfig /all、ip address、ip route |
設計値と一致 | 正常/異常/未確認 |
| 9 | ARP・重複IP | show ip arp、端末ARP表、ログ |
期待IP/MACが対応 | 正常/異常/未確認 |
| 10 | 往路・復路 | show ip route 宛先IP、traceroute |
双方で期待ネクストホップ | 正常/異常/未確認 |
| 11 | ACL・FW・NAT | ポリシー hit、セッション、NAT変換、Drop ログ | 要件どおり許可・変換 | 正常/異常/未確認 |
| 12 | DNS・ポート・サービス | nslookup、curl、nc、サービス状態 |
名前解決と業務応答が正常 | 正常/異常/未確認 |
物理・インターフェースでは何を見る?
LEDやリンク upだけで正常とは判断しません。速度・Duplex、CRC、Input エラー、Output drop、光レベル、LAGメンバー、ケーブル接続先を、正常時と同じ時間幅で比較します。
# Cisco IOS系の参照例。機種・OSで表示は異なる
show interfaces status
show interfaces GigabitEthernet1/0/10
show interfaces counters errors
show etherchannel summary
| 出力例 | 読み方 | 次の確認 |
|---|---|---|
connected / up/up |
物理リンクは成立 | エラー、VLAN、MACへ進む |
notconnect / down |
信号・対向・Shutdown候補 | 配線、対向ポート、管理状態 |
| CRCが増加 | 物理品質やDuplexなどの候補 | 増加時刻、ケーブル、Transceiver |
| Output drop増加 | 輻輳・Queueの候補 | 帯域、QoS、トラフィック量 |
L2はVLAN・Trunk・STP・MACをどう確認する?
端末ポートのAccess VLAN、上位リンクのAllowed VLAN、Native VLAN、STPの転送状態、MAC学習先を一続きで確認します。VLANが片側だけ定義されている、Trunk許可から漏れている、STPで想定外ポートがBlockingになると、リンク upでも通信できません。
- 対象端末のVLAN IDと接続ポートを確定する
- Access/Trunk設定とAllowed VLANを確認する
- VLANごとのSTP状態を確認する
- 端末MACをAccessから上位方向へ追う
- MACが途中で消える区間の設定・リンクを調べる
L3はIP・ARP・経路・復路をどう確認する?
送信元のIP・マスク・Gatewayから、同一サブネットか別サブネットかを判断します。別サブネットならGatewayのARP、各L3機器の最長一致経路、ネクストホップの解決、宛先から送信元への復路を順に追います。
show ip arp 192.0.2.10
show ip route 198.51.100.20
show ip cef 198.51.100.20 detail
traceroute 198.51.100.20 source 192.0.2.1
VRFやポリシー Based ルーティングがある環境では、グローバル テーブルだけを見ても実転送と一致しません。対象VRF・送信元を指定し、NATやトンネルを含む場合は変換前後のアドレスを通信フローへ書き込みます。
ACL・ファイアウォール・NATはどう確認する?
通信要件を送信元、宛先、プロトコル、ポート、方向へ分解し、実際に照合されるポリシー、Hit カウンター、セッション、NAT変換、Drop ログを確認します。Pingが通ってもTCP/443が通るとは限らず、反対にICMP拒否でも業務通信が正常な設計はあります。
| 観測点 | 確認する事実 | 注意点 |
|---|---|---|
| ACL | 適用インターフェース・方向・ACE hit | 暗黙の拒否、上位ルール |
| FW ポリシー | 一致ルール、対応、セッション、Drop理由 | Zone、App-ID、ユーザー条件 |
| NAT | 変換前後、ポート、戻りセッション | ポリシーがNAT前後どちらを見るかは製品依存 |
| 復路 | 戻り経路と同一ステートフル装置通過 | 非対称経路で破棄される場合 |
端末・DNS・アプリケーションはどう確認する?
ネットワーク区間が正常なら、端末FW、Proxy、DNS、待受ポート、サービス、証明書、アプリログを確認します。IPアドレス宛では成功し、FQDNで失敗するなら、まずDNS回答と接続先IPの差を確認します。
# Windows
nslookup app.example.com
Test-NetConnection app.example.com -Port 443
# Linux/macOS
dig app.example.com
nc -vz app.example.com 443
curl -vk https://app.example.com/
注意:業務環境でのポート scan、debug、パケットキャプチャは許可範囲と負荷を確認してから実行します。
復旧・切り戻し・エスカレーションはどう判断する?
原因候補、影響、復旧見込み、変更リスクを並べ、サービス復旧を優先するか、原因保存を優先するかを責任者と判断します。無承認の複数変更は避け、一操作ごとに結果を確認します。
| 判断 | 目安 | 必要な記録 |
|---|---|---|
| 切り戻し | 直前変更との因果が強く、安全に戻せる | 戻し対象、手順、影響、承認 |
| 暫定復旧 | 恒久対応に時間がかかり、迂回が安全 | 暫定期間、制約、監視、恒久期限 |
| エスカレーション | 権限外、影響拡大、原因不明、SLA接近 | 時系列、取得済み証跡、未確認項目 |
| 完了 | 業務通信、監視、冗長性、既存通信が正常 | 復旧試験、原因、再発防止、残課題 |
障害切り分けで避けるべき失敗
よくある失敗は、影響範囲を取らずに機器を再起動する、複数設定を同時に変える、片側の経路だけで正常とする、取得時刻のないログを並べる、Ping成功だけで業務復旧とすることです。
代わりに、仮説ごとに観測点を一つ決め、実行前後の差を残します。設定変更が必要なら、目的、対象行、期待結果、中止条件、切り戻しを先にレビューしてください。
まとめ:12項目を上から確認し、異常区間を狭める
ネットワーク障害は、事象・直前変更を固定し、物理、L2、L3、ACL/FW/NAT、端末・アプリの順で確認します。12項目の結果を正常・異常・未確認で記録すると、担当交代やエスカレーションでも調査を継続できます。
復旧後は疎通だけで終えず、業務応答、監視、冗長性、既存通信、ログを確認し、原因と再発防止まで記録してください。
